パウチ包装

日常生活に欠かせない、さまざまな商品に用いられている「パウチ包装」。その基礎知識と特長、活用方法を確認しながら、魅力ある商品パッケージのヒントを探ります。時代の要請によって誕生し、時代とともに進化を続けるパウチ包装の姿が見えてきました。

パウチ包装は、軟包装の代表格です。機能性が高く、食品から化粧品まで、幅広い分野のさまざまな商品に使われているパウチ包装について、基礎知識と特長を説明します。また、どのような活用方法があるか、利用場面を挙げながら、代表的なパウチ包装の種類を紹介します。
魅力ある商品パッケージのヒントを求めて、パウチ包装の世界をのぞいてみましょう!

パウチ包装の基礎知識

パウチ包装を語るとき、「軟包装」は外せないキーワードです。軟包装のおさらいを兼ねて、パウチ包装の概要を説明しましょう。

そもそも軟包装って!? パウチ包装って!?

軟包装とは、紙やプラスチック、アルミ箔などの軟らかい素材を使った包装の総称です。フレキシブルで、ものをつつむことにより形状がつくられます。これは、金属缶やガラス瓶などを用いる剛性包装とは大きく異なる点です。
軟包装のうち、袋状のものがパウチ包装と呼ばれます。パウチは、小袋や小物入れという意味のいわゆるポーチのこと。軟包装そのものをパウチと呼ぶ文献が見られるほど、パウチ包装は軟包装の顔ともいえる存在です。

パウチ包装の素材いろいろ

ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのプラスチック、アルミ箔、蒸着(じょうちゃく)フィルムが、パウチ包装の代表的な素材です。単体よりも二種類以上の複合材料となっていることが多いです。
包装材料に要求される機能は、物理的な強度、安定性(耐水性・耐熱性など)、遮断性(酸素バリア・防湿性・遮光性など)と実にさまざま。素材を組み合わせることで、一種類の素材だけでは満たせない機能を補完しています。

アメリカ生まれ、日本育ちのレトルトパウチ

時間に追われ、忙しい毎日を送る現代人にとって、欠かせない食品のひとつがレトルト食品。その歴史は、パウチ包装の歴史ともいえます。今から60 年以上前、レトルト食品は、1950 年代のアメリカで軍事用に開発がはじまりました。1959 年には「レトルトパウチ食品」が試験的に製造され、それは、1969 年に打ち上げられた月面探査船アポロ11 号にいわゆる「宇宙食」として搭載されました。しかし、レトルトパウチ食品は、市販用として市場に拡がるまでには至りませんでした。理由のひとつに、当時のアメリカでは、すでに冷凍食品の普及がかなり進んでいたことが挙げられます。
一方、日本では1964 年ごろから、透明パウチでの商品開発が進められました。ついに1968 年、市販用としては世界ではじめて、透明パウチに入ったレトルト食品「ボンカレー」が地域限定で発売されたのです。レトルト釡もなければ、包装材もないゼロからのスタート、試行錯誤のすえにたどりついた商品化でした。さらに翌年には、アルミ箔を芯層とした3 層の遮光性パウチによる、長期保存が可能なボンカレーが全国発売されました。その後のさらなる発展はいわずもがな、今日に至ります。
レトルト食品が普及した背景には、ともに歩んできたパウチ包装の存在もあるのです。

パウチ包装の特長

密封性、再封性、利便性、デザイン性、環境負荷の軽減(資源の節約)が、パウチ包装の特長です。これらは大きな強みであり、商品の価値を高めることに大きく貢献しています。以下に、詳しく見ていきましょう。

1. 密封性

高いシール技術により高められた密封性。密封した後、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)することで、常温での長期保存が可能となりました。

2. 再封性

かつて軟包装の弱点として挙げられていた再封性。チャックやスパウト(注ぎ口)付きのパウチは、見事にそれを解決し、必要な量を必要なときに使うことができるようになりました。

3. 利便性

持ち手付きのもの、電子レンジ対応のもの、パウチを容器として使えるものなど、使いやすさを追求したパウチ包装が次々と生まれています。「こうだったら便利なのに……」が形になっているのです。

4. デザイン性

商品を買おうとするとき、最初に目に入るのがパッケージデザインです。パウチ包装は、サイズも形もさまざま。「他社との差別化を図れる」「売り場でアピールできる」など、商品の付加価値を高めるポイントになります。

5. 環境負荷の軽減(資源の節約)

昨今、環境へ配慮した活動は、企業の業績をも左右するほど重要となっています。とりわけ海洋プラスチックゴミ問題は、世界規模で取り組むべき緊急の課題です。例えば、シャンプーの詰め替え用パウチは、一般的なプラスチックボトルに比べ、約80%もプラスチックを削減できるといわれています。軟包装業界では3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進はもとより、生分解素材やバイオマス素材の利用など、環境にやさしい積極的な取り組みが進められています。

パウチ包装の種類と活用方法~時代とともに進化して~

1990 年代、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)が台頭するなか、スタンドパウチが注目を浴びるようになりました。コンビニのように限られた売り場面積では、縦陳列が基本だからです。しっかりと自立するスタンドパウチは、効果的に陳列できるうえ視認性が高く、デザイン性にも富んでいるため、またたく間に市場が拡大しました。詰め替え用のパウチ商品が出はじめ、浸透していくのも、この時期です。その背景にあったのは、エコブーム。地球温暖化が深刻化するなか、環境への意識が高まっていたのです。
社会をとりまく環境や消費者の生活様式の変化に応じて、商品パッケージも常に変化し、進化を遂げています。ここでは、代表的なパウチ包装の種類と活用方法を見ていきましょう。

1. スタンドパウチ

袋の底が広がるスタンドパウチは、多くの商品で使われている基本的な形です。左右にガゼット(マチ)を付けたものもあります。
その名のとおり、しっかりと自立することが大きな利点であり、整然と美しく陳列できるうえに、店頭でのディスプレイにも適しています。
また、上部に穴を開けてフック陳列にすれば、小さなスペースを有効活用して売り場を確保できるでしょう。マニキュアのように小さな商品のパッケージに使えば、陳列時の安定性や商品のインパクトへとつながります。

2. ミニパウチ

一回使いきりサイズのミニパウチ。「ちょっとだけ試してみたい」の気持ちに寄りそえるため、試供品やトライアルキットとして活用する機会が多いです。新商品のテストマーケティングに使えるでしょう。連結タイプやスティックタイプもあり、用途別に選択肢が多いのもメリットです。

3. スパウトパウチ

液体はもちろん、味噌など粘度のあるものにも対応できるスパウトパウチ。詰め替え用という資源節約の観点からだけでなく、再封性が大いに生かされた画期的な商品も次々と生まれ、幅広い分野で活躍中です。

4. ボイル・レトルト殺菌対応パウチ

食品の保存性を高める熱殺菌。100 度までの加熱殺菌を「ボイル殺菌」、レトルト釡で加圧しながら100 度以上の温度で行う殺菌を「レトルト殺菌」といいます。さらにレトルト殺菌は、加熱温度により「セミレトルト殺菌(105 度~115 度)」「レトルト殺菌(116 度~120 度)」「ハイレトルト殺菌(121 度以上)」と区分されます。
このパウチは、ボイル殺菌とレトルト殺菌のどちらにも対応できる優れものです。

5. 窓付きアルミパウチ

アルミ蒸着部と透明部をつくることができるパウチ(部分蒸着)。透明部からアピールしたい商品を見せられます。アルミ蒸着部はキラキラと輝き華やかで、化粧品や食品などに使われることが多いです。

商品と出会うとき、いちばん最初に目が向き、手に触れるのは商品パッケージです。多様化する消費者のニーズに応えて、大量生産から多品種少量生産へと移り変わっている現代において、商品の顔ともいえるパッケージの重要性は、より高まっています。
軟包装の代名詞ともなったパウチ包装は、密封性、再封性、利便性といった機能に優れ、デザイン性を兼ね備えています。しかも、プラスチック削減の鍵であり、環境問題の解決に期待できます。このような特長によって商品の魅力をさらに引きだす力を秘めたパウチ包装を上手に活用して、商品をさらに輝かせませんか。

参考

  • 『パッケージデザインを学ぶ 基礎知識から実践まで』(株式会社 武蔵野美術大学出版局、書籍)